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生前贈与を受けても相続放棄は可能!注意点や詐害行為取消権も解説

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生前贈与を受けても相続放棄は可能!注意点や詐害行為取消権も解説

生前贈与を受けても相続放棄は可能!注意点や詐害行為取消権も解説

2023/09/11

生前贈与を受けていた場合、相続放棄は可能なのでしょうか?この疑問は多くの人々が抱えているものです。

結論、生前贈与を受けていても相続放棄することは可能です。ただし、注意すべき点もあります。

そこでこの記事では、「生前贈与と相続放棄の関係性」について徹底解説しています。生前贈与を受けている人はもちろん、子どもや孫への生前贈与を検討中の方も、ぜひ最後までご覧ください。

目次

    生前贈与を受けていても相続放棄は可能

    まず結論として、生前贈与を受けていても相続放棄は可能です。

    生前贈与は主に被相続人の生前に、相続放棄は被相続人の死後におこなわれます。そのため、生前贈与と相続放棄はまったく無関係でそれぞれが独立したものであり、互いに影響することはありません。

    そもそも「相続放棄」「生前贈与」とは?

    そもそも、相続放棄と 生前贈与とはどのよう なものなのでしょうか。それぞれについて解説していきます。
     

    相続放棄とは

    相続放棄とは、相続が発生した際に相続権を有する者がその権利を放棄する法的手続きです。簡単にいうと、「最初から相続人ではない」として、すべての財産を相続しないためにおこなわれる手続きのことです。

    相続放棄をおこなうことで、被 相続人の財産だけでなく、債務(借金)も受け継がないことになります。そのため、相続放棄は多額の債務がある場合や、家庭内のトラブルを避けるためによくおこなわれます。

    相続放棄は、家庭裁判所への申し立てが必要で、相続が開始された日から3ヶ月以内が期限とされているため注意が必要です。

    参考:民法915条 | e-Gov法令検索

    「単純承認」や「限定承認」との違い

    被相続人が亡くなったことで相続が発生したとき、相続放棄以外に「単純承認」と「限定承認」という選択肢があります。

    単純承認と限定承認には、以下のような違いがあります。

    単純承認 相続財産と債務をそのまますべて受け継ぐこと。
    債務も全額受け継ぐため、被相続人に債務がある場合にリスクが高くなっている。
    相続開始から3ヶ月以内に限定承認・相続放棄のどちらも選択しなかったとき、単純承認を選択したものと自動的に判断される。
    限定承認 相続する財産の限度までしか債務を受け継がないという選択肢。
    相続開始から3ヶ月以内に家庭裁判所へ申し出る必要があり、その場合は相続人全員で申し出なければならない。
    限定承認は、相続財産が少なく債務が多い場合に有用。


    単純承認・限定承認のいずれも、被相続人の財産を相続する手段です。これに対し、相続放棄は財産も債務も一切受け継がない選択となります。
     

    生前贈与とは

    生前贈与とは、ある人が生きている間に自分の財産の一部または全部を他の人に贈る行為です。生前贈与の場合は、当事者同士で書面または口頭によるやり取りが行われていれば問題がなく、家庭裁判所を介す必要はありません。

    相続に先立って、特定の相続人へ財産を分配する手段とされています。また、生前贈与は相続税の節税手段としてしばしば用いられます。

    贈与者と受贈者の間での納得があれば、生前贈与によって家族内の対立やトラブルを未然に防ぐことも可能です。

    生前贈与を受けた人が相続放棄するときは相続税に注意

    相続放棄をしただけでは、相続税が発生することはありません。しかし、被相続人の生前に「生前贈与」を受けていたうえで相続放棄をした場合、相続税に影響が出る可能性があります。
     

    相続税が発生するパターン①相続開始から3〜7年前の生前贈与

    相続開始から3〜7年前までに生前贈与が行われていた場合は、相続税の課税対象となることがあります。これを、「生前贈与加算」といいます。

    つまり、被相続人が亡くなる3〜7年前に生前贈与を受けていた場合は、課税対象となるということです。

    生前贈与によって被相続人からAさんが受け取っていた財産と、その他の相続人であるBさんやCさんが相続によって受け取る財産の合計額が「相続税の基礎控除」を超えていた場合、その評価額に応じた相続税を支払う必要があります。

    そして「3〜7年前」としている理由は、制度が改正され2024年1月1日より、「相続開始から7年以内」と期間が伸ばされるためです。

    また、生前贈与加算は、相続や遺贈によって財産を贈与された人のみが対象となります。相続人ではない人や遺贈を受けていない人は、生前贈与加算の対象ではありません。

    相続税の基礎控除とは?

    相続税の基礎控除は、相続税の計算において適用される特定の控除額を指します。具体的には、「亡くなった人が遺した財産のうち、一定の金額までは相続税がかからない=控除される」という無条件で適用できる控除のことです。

    基礎控除額は「3000万円+600万円×法定相続人の数」と計算されます。たとえば相続人が3人いた場合は、以下のような計算となります。
     

    3,000万円+600万円×3人=4,800万円


    そして、「相続される財産>4,800万円」となったときに、超過した金額分が課税の対象となるというわけです。

    生前贈与を受けた際に贈与税を支払っている場合、支払った税金分は相続税から控除を受けられます。
     

    相続税が発生するパターン②相続時精算課税制度が適用されていた生前贈与

    相続時精算課税制度が適用されている生前贈与についても、注意する必要があります。

    相続時精算課税制度とは、最大で2500万円までの生前贈与にかかる「贈与税」をゼロにする代わりに、相続が発生したとき「相続税」として計算する制度です。1度にまとまった金額が贈与されるときに利用されることが多くなっています。

    また、制度が改正され、2024年1月1日以降は「相続時精算課税制度を選択した場合でも基礎控除110万円が与えられる」ようになります。よって、相続時精算課税制度を利用した場合でも、1年間(1月1日から12月31日まで)の贈与額が110万円以下であれば、その贈与に贈与税はかからないようになりました。

    相続税や贈与税に関する制度は改正されることがあり、非常に複雑です。相続税の計算方法や節税方法は多岐に渡るため、具体的な税務計画を考える際には専門家の助言を受けることが推奨されます。
     

    相続税が発生しないパターンもある

    一方で、相続開始より3〜7年前に生前贈与を受けていたり相続時精算課税制度を利用していた場合でも、相続税が発生しないパターンもあります。

    「生前贈与によって受け取った財産+その他の相続人が相続で受け取る財産<相続税の基礎控除」となるパターンです。

    また、相続税の課税対象額からは、被相続人の「債務」や「葬儀費用」を減算できます。そのため、生前贈与をおこなった被相続人が多額の債務を抱えているような場合は、大抵の場合相続税がかからないといえます。

    以上のように、生前贈与を受けていて相続税がかかるパターンとかからないパターンが存在します。自身がどちらに該当するのか不明な場合は、司法書士や弁護士などの専門家に相談されることをおすすめします。

    「詐害行為取消権」と相続放棄・生前贈与の関係

    「詐害行為取消権」とは、債務者に以下のような行為が認められた時、債務者の行為を一定の要件の下に取り消すことができる権利です。
     

    • 債務者が不当に財産を処分した場合
    • 財産減少行為や偏頗弁済などをおこなった場合
       

    債権者は原則的に、債務者名義の財産にしか手を出せません。そのため、債務者が意図的にその他の人物へ権利を移譲していた場合、その財産には手が出せなくなってしまうんです。そこで設けられているのが、「詐害行為取消権」となります。

    詐害行為取消権は、相続放棄・生前贈与とどのような関係があるのでしょうか。
     

    相続放棄は「詐害行為取消権」の対象にならない

    相続放棄自体は、「詐害行為取消権」の対象とはなりません。債権者が詐害行為取消権を行使しても、相続放棄まで取り消すことは法的に許されていないんです。
     

    生前贈与は「詐害行為取消権」の対象になることがある

    一方で生前贈与は、特定の条件下で「詐害行為取消権」によって取り消しの対象となることがあります。生前贈与は通常の法律行為であり、詐害行為取消権の適用範囲内に入る場合があるんです。

    たとえば、大量の債務を持ち「債務不履行」が生じる可能性をわかっていながら生前贈与がおこなわれた場合、その贈与が詐害行為取消権により取り消される可能性があります。

    相続人の負担を減らす生前贈与以外の財産継承方法

    では、相続人の負担を減らす生前贈与以外の財産継承方法にはどのようなものがあるのでしょうか。今回は以下の3つについて解説します。
     

    • 「限定承認」を利用する
    • 「暦年贈与」を活用する
    • 債務がある場合は生前に債務整理を済ませる

     

    「限定承認」を利用する

    限定承認は、被相続人の抱える債務を被相続人の財産で差し引きする相続方法です。

    被相続人に債務があったとしても、その他に相続したい財産があるときに用いられることが多くなっています。
    ただし、限定承認は相続人全員で手続きを進める必要があるため注意が必要です。
     

    「暦年贈与」を活用する

    暦年贈与とは、課税対象とならない「1年に110万円以下の贈与」のことを指します。毎年110万円以下の贈与をおこなっていくことで、余計な税金をかけることなく財産を贈与していくことが可能です。

    ただし、詐害行為取消権の対象となったり定期贈与とみなされ贈与税の課税対象となったりする可能性もあるため、注意する必要があります。
     

    債務がある場合は生前に債務整理を済ませる

    生前に債務がある場合は、債務整理を済ませておくことも大切です。債務整理は、抱えている債務を計画的に返済し、減額・完済していくことを指します。

    生前の債務整理によってできるだけ債務を減らしておけば、相続人が債務を相続するリスクや負担を減らすことが可能です。

    司法書士や弁護士などの専門家へ相談のもと、自身に合った債務整理方法を選択しましょう。

    まとめ

    生前贈与を受けた場合でも、相続放棄は法的に問題なくおこなえます。ただし、相続税が発生するパターンや詐害行為取消権には注意が必要です。

    適切な知識と理解を持って、資産管理や生前贈与の計画を進めることで、未来に起こりうるトラブルを回避し、円滑な資産の移動を実現することができます。

    生前贈与についてお考えの方は、専門家へ早めに相談をしましょう。

    司法書士法人・行政書士鴨川事務所では、相続・生前贈与に関するお問い合わせを随時受け付けております。相続で不安に感じていることや悩みなど、1人で抱えこまずにぜひ私たちへご相談ください。

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