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未登記建物は相続登記義務化の対象?未登記の罰則の可能性について

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未登記建物は相続登記義務化の対象?未登記の罰則の可能性について

未登記建物は相続登記義務化の対象?未登記の罰則の可能性について

2024/04/11

令和6年4月から相続登記が義務化されました。しかし、そもそも登記がされていない「未登記建物」はこの制度の対象になるのでしょうか。また、未登記建物を相続した場合、どのような対応をすれば良いのでしょうか。

この記事では、未登記建物と相続登記の関係性について解説します。未登記建物を放置するリスク(デメリット)についても詳しく解説しているので、ぜひ最後までご覧ください。

 

目次

    未登記建物とは

    未登記建物とは、建物の所有権や所在地などの情報を法務局の登記簿に記載していない建物のことを指します。建物の登記には、「表題登記」と「権利登記」の2種類があります。「表題登記」は建物の物理的な情報を登記簿に記載するもので、「権利登記」は建物の所有権などの権利関係を登記簿の甲区や乙区に記載するものです。

    建物を新築した場合、表題登記は法律で義務付けられており、建築から1ヶ月以内に行う必要があります。しかし、この義務が適切に履行されないことがあり、以下のような状態の建物が存在します。
     

    • 建物が建っているにもかかわらず、登記がまったくされていない
    • 「表題登記」のみ行われ、「権利登記」がされていない
    • 「表題登記」の内容が古く、増築部分などが反映されていない

     

    このように、登記簿上で建物の所有者や所在地などの情報が不明確であったり、実態と乖離していたりする建物を「未登記建物」と呼びます。
     

    なぜ未登記建物が存在するのか

    建築から1ヶ月以内に表題登記を行うことが義務付けられているにも関わらず、なぜ未登録建物が多く存在するのでしょうか。

    これには以下のようなパターンが考えられます。

     

    • 所有者が完成直後に死亡し登記が放置された
    • 表題登記が必須である住宅ローンを利用せずに自己資金で建てたためそのまま登記されなかった
    • 増築部分の登記を忘れていた
    • 権利登記にかかる税金を避けて、意図的に表題登記のみ行った

     

    住宅ローンを組む場合、金融機関が抵当権の設定のために表題登記が前提となっているため未登記である可能性は低いですが、住宅ローン普及以前に建てられた建物は登記されずそのままになっているケースが多いくあります。そのため、築年数の古い建物は特に注意が必要です。
     

    未登記建物の確認方法

    未登記建物であるかどうかを確認する方法の一つに、固定資産税の課税明細書をチェックする方法があります。登記が完了している建物の場合、課税明細書には家屋番号が記載されています。一方、未登記建物の場合は、家屋番号の欄が空白になっているか、「未登記」や「未登記家屋」といった記載がなされています。

    建物を建築する際には、本来、建築確認申請書を自治体に提出し、完成した後に登記を行うのが一般的な流れです。しかし、古い建物の中には、建築確認申請と登記のどちらも行われていないケースがあります。ただし、市区町村は航空写真や現地調査により独自に建物の存在を把握しているため、未登記建物であっても固定資産税が課税されるという状況が発生します。

    手元に固定資産税の課税明細書がない場合でも、市区町村の固定資産税担当部署に請求することで、名寄帳(課税台帳)の交付を受けることができます。この名寄帳でも、家屋番号の有無を確認することで、未登記建物かどうかを判断することが可能です。

    相続登記義務化と未登記建物の関係性

    令和6年(2024年)4月1日から、相続登記が義務化されました。不動産を取得したと知った日から3年以内に相続登記を行わなかった場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。

    では、相続登記が義務化された今、未登記建物を相続した場合どのような扱いになるのでしょうか。

    未登記建物は相続登記義務化の対象外

    結論、表題登記されていない未登記建物は、相続登記の義務化の対象ではありません。相続登記において義務化対象となっているのはあくまで「権利登記」の部分であり、そもそも権利登記がされていない未登記建物には適用されないのです。
     

    表題登記は義務化されている

    では、相続登記義務化の対象外だから未登記建物をそのままにしていいのかというと、そうではありません。前述した通り、表題登記は義務化されているため、所有権を取得してから1ヶ月以内に法務局への申請が必要です。これを怠った場合、罰則を受ける可能性もあります。

    とはいえ、実際に過料を課されている例はほとんどなく、表題登記をしていない人も多いのが現実です。しかし、未申請が違反であることに変わりはありません。また、相続登記義務化により、これまで許容されていた未登録建物についても厳格な取り締まり対象になる可能性があります。未登記建物を相続したら、そのまま放置するのではなく、原則に従いきちんと表題登記するようにしましょう。

     

    未登記建物を放置するリスク

    未登録建物を放置しておくと、以下のようなリスクがあります。
     

    • 表題登記をしないことは罰則の対象
    • 所有権の主張ができない
    • 担保にできない
    • 建物の売却が難しくなる
    • 固定資産税の軽減措置が利用できない
    • 過去の固定資産税を請求される
       

    それぞれ詳しく見てみましょう。
     

    表題登記をしないことは罰則の対象

    表題登記は、不動産登記法47条1項で義務化されています。10万円以下の過料に処せられる可能性があるため、表題登記は行うようにしましょう。ただし、権利部の登記については任意です。

    関連記事:相続登記の義務化による罰則・過料とは?罰則を受けないための方法も解説

     

    所有権の主張ができない

    建物の所有権を第三者に対して主張するためには、表題登記だけではなく、権利登記も行っておく必要があります。例えば、借地上に建てられた建物が未登記の場合、土地の所有者(地主)から立ち退きを求められたとしても、建物の所有権や土地の賃借権を主張できません。

     

    担保にできない

    金融機関から融資を受ける際、未登記建物を担保にすることはできません。これは、登記簿謄本(登記事項証明書)が存在しないため、「抵当権設定登記」を行うことができないからです。また、未登記建物が建てられている土地のみを担保として融資を受けることも難しいでしょう。金融機関は、融資が滞った際の債権回収手段として抵当権を設定しています。未登記建物がある土地は、債権回収時に支障をきたす可能性があるため、担保として認められにくいのです。

     

    建物の売却が難しくなる

    未登記建物を売却しようとしても、それは現実的ではないでしょう。未登記建物には登記情報自体が存在しないため、新しい所有者への所有権移転登記ができません。買い手側は、権利関係が不明確なままの建物を買うことになり、将来的なトラブルのリスクが高くなります。また、前述の通り、未登記建物は所有権の主張や金融機関からの融資も不可能となるため、

    このような理由から、未登記建物をそのまま売買することは現実的ではなく、売却前に適切な登記手続きが前提となるので注意してください。

     

    固定資産税の軽減措置が利用できない

    建物の登記がされていると、敷地の固定資産税は最大6分の1、都市計画税は最大3分の1に軽減されます。しかしながら、未登記建物の場合、この軽減措置の適用対象となるため、税金が大幅に増加する可能性があります。

     

    過去の固定資産税を請求される

    自治体に建物の存在が判明すると、過去の未納分の固定資産税を請求されます。建物の築年数が古いほど、未納期間が長くなり、支払う税額が高額になる可能性があるため注意が必要です。

    未登記建物の相続手続き流れ

    通常、不動産を相続したら相続登記を行いますが、相続した財産の中に未登記建物が含まれていた場合は別の対応が必要になります。以下では、どのような流れで進めるか、解説します。
     

    遺産分割協

    遺言書がない場合、まずは相続人全員で話し合い、未登記建物を誰が相続するかを決めます。建物を正しく評価するのは難易度が高いため、専門家に相談することをおすすめします。
     

    遺産分割協議書の作成

    未登記建物は、所在地や床面積など建物を特定するための情報がありません。そのため、固定資産税の評価証明書に記載された建物の情報を引用し、建物を特定するための表題部情報の代わりとして記載します。

    (例)

    【所在】 京都府京都市○○区○○町○番○

    【種類】 居宅

    【構造】 木造○階建て

    【床面積】1階○○㎡ 2階○○㎡
     

    表題登記

    未登記建物は、表題登記を行う必要があります。

    法務局への申請の際に必要となる書類は、以下のようなものがあります。

     

    • 所有権証明書(固定資産税の納付証明書など、状況に応じて異なる)
    • 登記申請書
    • 建物の図面や各階平面図
    • 遺産分割協議書
    • 申請者の住民票
    • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
    • 相続人全員の戸籍謄本と印鑑証明書

     

    所有権保存登記

    未登記建物の相続手続きにおいて、建物の所有者を法的に明確にするためには、「権利登記」が必要不可欠です。遺産分割協議などにより、未登記建物を相続する相続人が決定している場合は、その相続人の名義で所有権保存登記(登記簿の権利部(甲区)に対して初めて行う登記)を行います。

    所有権保存登記を申請する際に必要となる主な書類は以下の通りです。

     

    • 所有権保存登記申請書
    • 住宅用家屋証明書(減税要件を満たしている場合)
    • 申請者の住民票

    未登録建物の相続における注意点

    未登録建物を相続する際は、以下の点に気をつけましょう。
     

    未登記の確認は早めに

    遺産分割協議を行う際に、十分な情報収集がなされていない場合、知らぬ間に未登記建物を相続してしまうこともあります。一般的に、一度成立した遺産分割協議を見直すことは認められていませんが、未登記建物の存在が判明し、それを相続することに納得がいかない場合は、例外的な対応が可能です。他の相続人全員の同意が得られれば、当初の遺産分割協議の内容を無効とし、新たに協議をやり直すことができるのです。

    しかし、他の相続人が既に相続手続きに着手している場合、遺産分割協議のやり直しに同意してもらうのは容易ではありません。したがって、遺産分割協議を行う前に、相続対象となる建物の登記状況を入念に確認しておきましょう。早い段階で未登記建物の存在を把握しておくことで、トラブルを未然に防ぎ、スムーズな相続手続きが可能となります。
     

    解体予定の建物は登記不要

    相続した未登記建物を取り壊す予定がある場合、表題登記を行う必要はありません。ただし、建物を解体した後は、自治体への「家屋滅失届出書」の提出を忘れないでください。この届出を怠ると、解体後も固定資産税が課税され続けてしまう可能性があるため、注意が必要です。

     

    まとめ

    未登記建物は、相続登記義務化の対象外です。ただし、未登記建物を相続した際は相続登記ではなく表題登記を行う必要があります。現状は厳格な取り締まりがされていなくても、今後は罰則対象になる可能性は多いにあります。未登記の状態で放置するとさまざまなデメリットも生じるため、正しい手順で手続きを進めましょう。

    未登記建物を含む相続は、フローが複雑になりやすいため、早めに専門家へ相談することをおすすめします。司法書士法人・行政書士鴨川事務所では、相続に関するお問い合わせを随時受け付けております。相続で不安に感じていることや悩みなど、1人で抱えこまずにぜひ私たちへご相談ください。

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