相続権も渡すことができる!?相続分譲渡の話~京都で相続手続きの相談なら京都鴨川司法書士・行政書士事務所へ~
2021/08/26
今回は相続権の譲渡(相続分の譲渡)についてお話していきたいと思います。
なかなか、なじみのない概念かと思いますので、わかりやすく概説していきたいと思います。
相続分の譲渡とは、その名の通り、自己の相続分を他の相続人や第三者に譲り渡すことを指します。相続分の譲渡があった場合には、その相続に含まれるプラスの財産もマイナスの財産も含めて譲受人に包括的に譲渡することになります。
つまり、自己の持っていた相続に対する権利のすべてを他人に渡すということです。
そして、相続分の譲渡を受けた譲受人は、相続人であれ、その他の第三者であれ、遺産分割協議に参加することができます。
この相続分の譲渡を行う場合には、その旨の契約書を作成するケースが一般的です。「相続分譲渡証書」「相続分譲渡通知書」「相続分譲渡証明書」等のタイトルで作成し、譲渡人が実印で判子を押し、印鑑証明書を添付します。この印鑑証明書付の譲渡証明書が法務局等の相続手続きの際に必要となります。(不動産の相続登記の場合には、戸籍・遺産分割協議とともに添付書面となります)
ではどういった場合に、この相続分の譲渡の制度を利用していけばよいのでしょうか。
ケースとしては、
①相続に関与したくない場合。
一般的に相続人が増えれば増えるほど、遺産分割協議の成立は難しくなります。こういった場合に、例えば、相続人の一人が、「私はもう嫁に行ったのだから、実家の相続のことには首を突っ込みたくない」といった場合です。このような場合には、相続人の一人に相続分を無償又は有償で譲渡を行い、相続から一抜けすることができます。また、同じような制度に相続放棄というものがあります。ただし、相続放棄の場合には、家庭裁判所への決められた期間制限をもっての手続を行う必要があります。相続分の譲渡のほうが気軽に相続人間のみでできる手続きのため、手続きは行いやすいと思います。ただし、債務の免責を受けるという効果を優先して利用したい場合には相続放棄を利用するべきかと思います。
(参考リンク 相続放棄って何? https://kyotokamogawa-souzoku.com/blog/detail/20210817090415/)
(参考リンク 相続放棄のやり方 https://kyotokamogawa-souzoku.com/blog/detail/20210818081829/)
(参考リンク 相続放棄ができない場合 https://kyotokamogawa-souzoku.com/blog/detail/20210818090448/)
②一人の相続人が相続分を増やすため
こちらはよくあるご相談のケースです。相続人が20人30人と増えてくると協議自体が難しくなり、また法定相続分も各相続人が少なくなってしまいます。この場合に、一人の相続人が遺産分割協議を有利に進めていくために、①のケースのように相続に関与したくないという相続人から相続分を集めていくといったことが有効になります。相続分の譲渡を受けることにより、一人の相続人がより多くの法定相続分をもつことができるようになり、結果的に遺産分割協議について、イニシアティブを握ることが可能となります。このように遺産分割協議を有利に進めていく事前準備として相続分の譲渡を利用していくといったこともとても有効かと思います。しかし、この場合には、法的にかなり技巧的な手段となるため、専門家の利用が必須となるかと思います。
主に上記の理由により、相続分の譲渡の制度を利用することになるかと思います。また①のケースでは、そもそも遺産分割協議で何も取得しないという内容の遺産分割協議に判子を押すことで同じ効果が得られますが、遺産分割協議が長引く場合には、相続分の譲渡を行ったほうがよいのかもしれません。
遺産分割協議はその協議が難航してしまうことが一般的です。日々の生活を平穏に暮らしていくために、遺産分割協議から一抜けしてしまうことも一つの選択肢となるかと思います。
今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。
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