成年後見制度と遺産分割協議について~京都で相続手続きの相談なら京都鴨川司法書士・行政書士事務所
2021/08/26
今回は、成年後見制度の概要と、成年後見制度と遺産分割協議について、説明させていただければと思います。
遺産分割協議を行おうと思った場合、相続人の一人が認知症等により、法律上、遺産分割協議を行うことができなくなってしまう場合です。
認知症の方は、通常、意思能力がないものとされ、その方が参加されてなされた遺産分割協議は法律上、無効となります。
たとえ、他の相続人が認知症の方の分の判子を使って代わりに署名捺印を行い、法務局や銀行での手続きが通ったとしても、遺産分割協議は無効となりますので注意が必要です。
(専門家は手続きが適正であるかを判断する前に、法律行為が適正かどうかの判断を行います。これを実体法による判断といったりします。実体法による判断を行った後に、どのような手続きに落とし込むかの判断を架橋判断、その後手続きが適正であるかどうかの判断を手続法による判断といったりします。この実体法による判断→架橋判断→手続法による判断という三段階を順序よく判断していくことが専門家としては必要となります。手続きができるからと言って、それが実体法上も有効であるという考えかたはとても危険です。)
すこし話がそれました。
遺産分割協議を行う前提で、相続人に認知症の方がいる場合には、原則的に成年後見制度の利用を検討することが多いです。
成年後見制度とは、認知症の方に親族や専門職の方(司法書士や弁護士等)が後見人としてつき、主に本人の財産管理や身の回りの監護を行います。
先の遺産分割協議の例でいうと、本人の代わりに後見人が遺産分割協議に参加します。この場合、後見人は本人の利益となるように協議を成立させることが求められます。ですので、「本人のために有利であること」と「家族にとって一番よい形であるのかどうかということ」にはズレが生じるため問題になりやすいです。
例えば、相続人全員が元気である場合には、相続人の一人が不利な結果となる遺産分割協議を成立させることもできますが、相続人の中に成年後見制度を利用されている方がいますと、その方が不利になるような遺産分割協議を成立させることはできないということです。最低限、後見人は法定相続分の財産は確保するように協議を成立させる責任を持っていると言えます。この点、遺産分割の協議の内容は、後見人が事前に家庭裁判所に見せて意見をもらったりして、本人にとって不利な内容になっていないか等のチェックが行われます。
このようにして、成年後見人の関与をもって遺産分割協議をすることができます。ただ、やはり成年後見制度を利用しなければならない場合には、その選択肢が限られてきてしまうことも事実です。ご相談の中でも、成年後見制度を利用して遺産分割をこういう風に成立させたいというご親族様からのニーズもあることも事実なのですが、それが果たして認知症になってしまった方のニーズに合っているかどうかを再検討する必要がでてくる場合が多いので注意が必要です。私もこれまで成年後見人に就任し、遺産分割協議の代理等の業務をやらさせていただいたことがあります。こういった場合には成年後見人とそのほかの相続人との話し合いを根気強く行っていくことが必要だと感じました。
成年後見制度を利用した場合の遺産分割協議には時間も手間もかかりますので、やはり、こうならないうちに早めに遺産分割協議を行ったり、被相続人の方が生前に遺言や生前贈与をしておくことがとても重要だと思います。
(参考リンク 遺言のメリット https://kyotokamogawa-souzoku.com/blog/detail/20210804072945/)
(参考リンク 生前贈与について https://kyotokamogawa-souzoku.com/blog/detail/20210816072520/)
(参考リンク 認知能力が低下している場合の相続対策 https://kyotokamogawa-souzoku.com/blog/detail/20210812083121/)
今回の記事はここで終了です。似たケースとして、遺産分割協議を行う相続人の中に未成年者がいる場合のリンクも張っておきますので、ご参照いただければと思います。
(参考リンク 前編 https://kyotokamogawa-souzoku.com/blog/detail/20210810194317/)
(参考リンク 後編 https://kyotokamogawa-souzoku.com/blog/detail/20210810202454/)
京都で相続手続きの相談なら京都鴨川司法書士・行政書士事務所へ