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生前に相続放棄できない理由とは?相続放棄に代わる3つのケースを解説

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生前に相続放棄できない理由とは?相続放棄に代わる3つのケースを解説

生前に相続放棄できない理由とは?相続放棄に代わる3つのケースを解説

2023/08/13

相続は、家族間の重要な問題です。なかには、生前に「自分の財産を特定の相続人へ相続させたくない」と考える人もいます。

ですが、生前に相続放棄をする・させることはできません。この記事では、以下の内容を解説しています。
 

  • 生前に相続放棄をできない理由
  • 生前の相続放棄の代わりとなる3つのケース
  • 生前に特定の相続人へなるべく財産を残す3つの方法


生前から相続について検討している方や、他の相続人へ相続をさせたくないと考えている方など、ぜひ最後までご覧ください。

目次

    被相続人の生前に相続放棄はできない

    被相続人の生前に相続放棄することは、法律上認められていません。

    相続放棄は通常、「相続が開始されたあと一定の期間内におこなえる手続き」です。日本の民法において、相続は「被相続人の死亡後」に発生するものとされているためです。

    そのため、相続人が被相続人の生前に相続放棄の意思を示しても、法的に無効となります。

    また、証拠を残そうと念書を作成していたとしても、法的な効力はないので注意が必要です。

    生前の相続放棄の代わりとなる3つのケース

    では、相続人に生前の段階で相続放棄をしたい場合の対処法はあるのでしょうか。今回は、以下3つの対処法をご紹介します。
     

    • 遺言書を作成したうえで遺留分を放棄してもらう
    • 推定相続人の排除を請求する
    • 欠格事由に該当している
       

    ケース①遺言書を作成したうえで遺留分を放棄してもらう

    生前に相続放棄ができない代わりに、遺言書を作成したうえで遺留分を放棄してもらう方法が考えられます。

    遺留分とは、「相続人が最低限受け取るべき相続財産」のことで、兄弟姉妹以外の相続人(配偶者や子ども・直系尊属など)に適応されるものです。相続人は、被相続人の生前に「家庭裁判所」の許可を得たうえで遺留分を放棄することが可能です。(民法1049条)

    家庭裁判所の許可が必要となっているのは、被相続人の生前に相続人の遺留分が不当に放棄されるといった可能性があるからです。不当な放棄などによるトラブルを防ぐために、裁判所へ遺留分をなぜ放棄するのか、正当な理由を説明することが必要となります。

    ではなぜ、「遺言書を作成したうえで遺留分を放棄してもらう」必要があるのでしょうか。

    遺言書を作成しただけでは相続放棄できない

    結論、遺言書を作成しただけでは遺留分が残るため、遺留分の放棄をしてもらわない限りは「完全な相続放棄」とはなりません。

    ここで例をあげてみます。被相続人である良子さんに、太郎さんと次郎さんという2人の子どもがいるとします。
    次郎さんは良子さんの生活面のケアを積極的におこなっていましたが、太郎さんとは関係が悪くあまり関わりがない状態でした。

    そこで良子さんは、次郎さんにだけ相続をしたいと考え遺言書にその旨を記載したとします。ですが太郎さんが「遺留分」を主張すれば、良子さんの財産のうち4分の1は太郎さんが取得できるという流れです。

    以上のように、遺言書を作成しただけでは遺留分が残ってしまうため、遺言書の作成に加えて遺留分の放棄をしてもらう必要もあるということです。

    遺留分放棄にかかる金額

    遺留分放棄には、収入印紙代800円と連絡用として郵便切手代(家庭裁判所により異なる)が必要です。

    また遺留分放棄を申し立てるときは、被相続人の住所地を管轄している家庭裁判所へ、以下の書類を提出する必要があります。
     

    • 遺留分放棄の申立書
    • 相続財産の目録
    • 被相続人と申し立てをする人の戸籍謄本

     

    遺留分放棄をしても相続放棄が必要になるケースが多い

    遺言書の作成をしてから遺留分放棄をしてもらう際の注意点は、放棄したのが遺留分のみであり、相続放棄ではないという点です。つまり相続権は残った状態となります。

    そのため、被相続人に負債がある場合、その負債は相続しなければなりません。負債を相続したくない場合は、被相続人の死後に相続放棄が必要となります。
     

    ケース②推定相続人の排除を請求する

    推定相続人の排除請求は、特定の相続人を相続から除外する法律上の手続きです。

    推定相続人とは「被相続人が死亡した際に相続人となる人」を指し、特定の理由がある場合に推定相続人の排除請求をおこなうことで、相続人の資格を剥奪できます。これによって、相続人に相続をさせないことが可能です。

    特定の理由としては、法律によって「被相続人への虐待や侮辱」などと定められています。

    参考:民法第892条|e-Gov法令検索
     

    ケース③相続の欠格事由に該当している

    相続の欠格事由に該当する場合、その相続人は相続から除外されると法律で定められています。

    相続権の欠格事由としては、たとえば以下のような例があります。

    故意の殺害 相続人が被相続人もしくは相続順位が先順・同順の相続人を故意に死亡させた
    殺害の隠蔽 相続人が殺害されたことを知りながら、告発や告訴をしなかった
    遺言の偽造・変造 相続人が被相続人の遺言を偽造または変造した
    遺言に関する詐欺または強迫 被相続人へ詐欺または強迫をしたことで、遺言の内容を撤回・変更などをさせた


    参考:民法第891条|e-Gov法令検索

    これらの欠格事由に該当する場合は、裁判所への申し立ては必要なく当然に相続権を失うとされています。

    生前に特定の相続人へ
    なるべく財産を残す3つの方法

    では次に、生前に特定の相続人へなるべく財産を残すための方法について、以下の3つを解説します。
     

    • 特定の相続人へ生前贈与をする
    • 債務整理をおこなう
    • 生命保険の受取人を特定の相続人にする

     

    特定の相続人へ生前贈与をする

    特定の人物へ生前贈与をすることで、相続させたくない人物への相続金額を減額することが可能です。

    ただし生前贈与でも、遺留分に注意しなければなりません。遺留分の計算は、「相続開始時に被相続人が有している財産+生前贈与をした財産ー債務の全額」をした金額にておこなわれるからです。

    しかし、生前贈与した財産のすべてが含まれるわけはないので、何が含まれて何が含まれないのかを確認したうえで、生前贈与を進めるようにしましょう。
     

    債務整理をおこなう

    債務整理をおこなうことで、相続人が過度な債務の負担を受けるのを防ぎ、財産の減少を抑えることができます。相続には、財産だけでなく債務も含まれているためです。

    債務整理には、「自己破産」「任意整理」「個人再生」などの種類があります。どの債務整理が自分に最適なのか、専門家に判断をあおいで適切な債務整理を進めること生命保険の受取人を特定の相続人にするが重要です。
     

    生命保険の受取人を特定の相続人にする

    生命保険の受取人を特定の相続人に指定するという手段もあります。被相続人の死後に受け取る死亡保険金は、受取人の財産となり相続される財産に該当しません。そのため、より多くの資金を残すことが可能です。

    親の負債を相続したくない場合は?

    ここまでご説明したような、被相続人の立場から特定の相続人へ自身の財産を相続したくないというパターンのほかに、相続人の立場として被相続人の財産を相続したくないパターンもあります。

    相続人の立場として被相続人の財産を相続したくないパターンとしてよくあるのが、「親が抱える負債を相続したくない」というものです。親が抱える負債を含めて、相続しない手段はあるのでしょうか。

    結論、やはり被相続人の生前に相続放棄をすることはできません。ですが最低限できることはあるので、解説をしていきます。
     

    生前から専門家へ相談をするのがおすすめ

    被相続人の生前から相続放棄はできませんが、生前から専門家へ相談しておくことはできます。

    親の負債が多くて相続をしたくないと考えているのであれば、専門家指導のもと早めに債務整理を進め、借金をできるだけ減額することが有効です。ただ、債務整理を進めるには債務者である親の理解と協力を得る必要があるため、まずは親と子で友好な関係性を築く必要があります。
     

    遺言書に負債を相続させないよう書かれていても必ず債務を免れるわけではない

    債務整理をおこなうことで、相続人が過度な債務の負担を受けるのを防ぎ、財産の減少を抑えることができます。相続には、財産だけでなく債務も含まれているためです。

    債務整理には、「自己破産」「任意整理」「個人再生」などの種類があります。どの債務整理が自分に最適なのか、専門家に判断をあおいで適切な債務整理を進めること生命保険の受取人を特定の相続人にするが重要です。
     

    生命保険の受取人を特定の相続人にする

    遺言書へ負債の相続を拒否する旨を書いていても、遺言どおりにはいかず負債を相続せざるを得ない可能性が高いです。

    たとえば、良子さんに太郎・次郎という2人の息子がいたときに、「私が抱えている負債はすべて太郎に相続させる」と遺言書に記したとします。ですが、債権者は遺言の内容に従わず、太郎と次郎の2人へ債務の請求をすることが可能です。これは、民法によって定められています。

    そのため親が抱える負債は、債務整理によってできるだけ減額をしておくことが大切です。

    参考:民法第902条の2|e-Gov法令検索

    被相続人の生前ではなく
    死後の相続放棄は可能

    被相続人の生前に相続放棄することはできませんが、死後には一定の条件と手続きを経ることで相続放棄が可能です。
     

    相続放棄の流れ

    相続放棄の手順を確認しましょう。相続放棄は、以下のステップで進められます。

    被相続人の財産調査 まず初めに、相続対象となる財産を調査します。相続放棄する場合でも、相続される財産の全容を把握しておくことが大切です。
    相続放棄の意思を決定する 被相続人の全財産を把握できたら、相続放棄の意思を決定しましょう。一度相続放棄の手続きをすれば、撤回することはできません。慎重に検討してください。
    相続放棄に必要な書類を揃える 相続放棄に必要な書類を揃えましょう。家庭裁判所の窓口やホームページから入手可能です。
    書類に必要事項を記入のうえ申請する 書類へ必要事項を記入し、提出してください。不備があると相続放棄は認められません。抜け漏れがないかを必ず確認しましょう。
    手続きが完了する 申請が認められれば、裁判所から通知書が郵送されます。通知書の郵送をもって、相続放棄が認められらたことになります。


    1つ1つのステップで不備がないように対応を進めましょう。
     

    相続放棄には期限がある

    相続放棄には期限が存在します。相続放棄の期限は、民法によって「被相続人の死亡を知ってから3ヶ月以内」と定められています。

    上記の期限を過ぎると、自動的に相続が成立し、負債などの相続財産も引き継がれることとなります。そのため、相続に関する情報や負債の有無を早期に把握し、期限内に適切な行動を取ることが求められます。

    また、事情次第で相続放棄の期限を延長することも可能です。専門家へ判断を仰ぎ、適切に対応するのがおすすめです。

    まとめ

    相続放棄を生前におこなうことはできませんが、生前の相続放棄の代わりとなるケースや特定の相続人へ財産を残す方法は存在します。

    自身や親族の相続について生前から検討をしておきたいとお考えの方は、専門家へ早めに相談をしましょう。

    司法書士法人・行政書士鴨川事務所では、相続に関するお問い合わせを随時受け付けております。相続で不安に感じていることや悩みなど、1人で抱えこまずにぜひ私たちへご相談ください。

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