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【徹底解説】法定相続人と連絡が取れないときの相続の進め方・対処法

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【徹底解説】法定相続人と連絡が取れないときの相続の進め方・対処法

【徹底解説】法定相続人と連絡が取れないときの相続の進め方・対処法

2023/07/19

遺産相続は、すべての法定相続人が揃って初めて成立します。しかし、なかには一部の法定相続人と連絡が取れず、相続手続きを進められずに困っている方も少なくありません。

では、連絡の取れない法定相続人がいるときはどのように相続を進めれば良いのでしょうか。

この記事では、「法定相続人の現住所や連絡先が不明な場合」と「法定相続人の現住所と連絡先が分かっていても連絡が取れない場合」の対処法について、詳しく解説しています。

この記事を読めば、法定相続人と連絡が取れない状況の改善策を理解できます。相続が進まずに困っている方は、ぜひ最後までご覧ください。

目次

    法定相続人と連絡が取れないまま進めた相続は無効となる

    一部の法定相続人との連絡が取れない状態では、相続手続きは進められません。遺産分割協議に全員が参加しない場合、そこで取りまとめられた遺産分割協議書は無効となると法律で定められているからです。

    大前提として遺言書があれば相続は可能

    そもそもの大前提として、被相続人が作成した遺言書が存在すれば、遺言書に記載されている内容に従って遺産が分配されるため、すべての法定相続人と連絡を取る必要はなくなります。

    ただし、遺言書が適切に作成・保管されていること、またその内容が法的に有効であることが必須です。

    法定相続人と連絡が取れないときに考えられる原因

    法定相続人と連絡が取れない理由として、よくあるのが以下のような理由です。
     

    • 疎遠により過去に一度も顔を合わせたことがない
    • 親族間で不仲の関係にある
    • 音信不通によってどこで何をしているのか分からない

     

    実際には、家庭環境や親族同士の関係など人によって全く状況が異なり、相続人と連絡が取れない理由は多岐に渡ります。

    法定相続人の現住所や連絡先が不明な場合の対処法

    法定相続人の現住所や連絡先が不明な場合、現住所の調査やその他の対応が求められます。ここでは、適切な対応を理解していただくために、大きく分けて以下の2点について解説します。
     

    • 戸籍附票を取得し現住所を調査する
    • 戸籍附票に記載されている住所に住んでいない場合の対処法

     

    実際には、家庭環境や親族同士の関係など人によって全く状況が異なり、相続人と連絡が取れない理由は多岐に渡ります。
     

    戸籍附票を取得し現住所を調査する

    戸籍附票を利用することで、法定相続人の最新の住所を調査できます。住所が判明すれば、手紙での連絡や直接の訪問が可能です。

    戸籍附票は、連絡の取れない法定相続人の「現在の本籍地」がわかれば、本籍地にある役所へ戸籍附票の発行を申請できます。戸籍附票には、住民登録されている住所が記載されているため、居住地の確認が可能です。

    ただし、本人以外で戸籍附票を発行できるのは「同じ戸籍に入っている親族」のみです。たとえば、現住所を知りたい人が独立してほかの戸籍を作っていた場合は同じ戸籍ではないため、戸籍附票を発行できません。
     

    戸籍附票に記載されている住所に住んでいない場合の対処法

    戸籍附票に記載されている住所に訪問しても、すでにその場所に住んでいない可能性もあります。そのような場合には、以下2つの対処法が考えられます。
     

    • 不在者財産管理人を手配する
    • 失踪宣告を申し立てる
       

    対処法①不在者財産管理人を手配する

    法定相続人が行方不明の場合、裁判所から「不在者財産管理人」を選任してもらい、代理で遺産分割の協議や各種の手続きなどを進める方法があります。たとえ行方が分からない法定相続人だからといって、遺産分割方法を勝手に決定したことによって、参加しなかった相続人に不利益があってはならないからです。

    不在者財産管理人は、裁判所のある地域の弁護士が選定されることが多く、裁判所によって監督されるため、自宅の名義を譲ってもらうときは無償ではなくそれ相応の代償金を支払う必要があったり、選任されるまでに時間や費用がかかったりします。

    そのため、不在者財産管理人を選定してまで相続の諸手続きを進めるべきなのか、法定相続人間で相談する必要があります。

    参考:不在者財産管理人選任 | 裁判所

    対処法②失踪宣告を申し立てる

    行方不明の法定相続人が7年間にわたり連絡が取れない場合は、「すでに亡くなっている可能性が高い」として「失踪宣告」を申し立てることが可能です。失踪宣告は、行方不明者の住所もしくは居住地を管轄する家庭裁判所へおこないます。

    失踪宣告がなされると、「その人は法的に死亡した」とみなされ、その他の法定相続人間で相続を進めることが可能となります。

    ただし、失踪宣告は費用・時間がかかりますし、法的に死亡したとみなすという事実がそれ相応に重い決定であるということを、事前に理解しておかなければなりません。

    参考:失踪宣告 | 裁判所

    法定相続人の現住所と連絡先が分かっていても連絡が取れないときの対処法

    ここまでは現住所・連絡先が分からないときの対応を解説してきましたが、なかには現住所や連絡先が分かっていても連絡が取れないことも。

    そのような場合の対処法として、以下の3つを解説します。
     

    1. さまざまな方法で連絡し遺産分割協議への参加を促す
    2. 裁判所へ遺産分割調停を申し立てる
    3. 対立関係であれば専門家に依頼する

     

    さまざまな方法で連絡し遺産分割協議への参加を促す

    ひとまずは、根気よく連絡を取って遺産分割協議への参加を促すことが大切です。

    電話・手紙・直接訪問などさまざまな方法で連絡を取ってみてください。それでも反応がなかったり遺産分割協議への参加を拒否された場合は、以下のようなことを伝えて交渉してみましょう。
     

    • 相続を先延ばしにすることで余計な費用がかかる
    • いつまでも拒否される場合は専門家に相談しようとしている
    • 遺産分割調停の申し立てを考えている
    • 遺産分割協議は、直接でなくてもオンラインや電話で参加できる

     

    相続を進めないデメリットやリスクを伝えたり、遺産分割協議に参加するハードルを下げたりすることで、心を動かせるかもしれません。実践してみてください。
     

    裁判所へ遺産分割調停を申し立てる

    さまざまな連絡をしても遺産分割協議へ参加してもらえないのであれば、家庭裁判所へ「遺産分割調停」を申し立てましょう。

    遺産分割調停とは、調停委員(各法定相続人とは関係のない中立の立場)が間に入り、それぞれの法定相続人から話を聞くことで妥協点を探して解決を目指すもので、当事者同士が顔を合わせて話し合う必要はありません。

    遺産分割調停で肝となるのが「裁判所から当事者へ呼び出し状が送られる」ということです。呼び出し状が届いた当事者のほとんどが裁判所へ足を運ぶため、ここでようやく相続を進められるようになります。

    また、呼び出し状を無視し続けられたとしても、「遺産分割審判」に移行して裁判官によって遺産分割方法が決定されるので、相続を終了させることが可能です。

    参考:遺産分割調停 | 裁判所

    相続人と連絡が取れずに遺産相続を放置する4つのリスク

    相続人と連絡が取れずに遺産相続を放置すると、さまざまなリスクが生じます。これから解説する4つのリスクを理解したうえで、相続を早期に終了できるよう取り組みましょう。
     

    リスク①預貯金を払い戻せない

    相続の項目に亡くなった人の預貯金が含まれている場合、相続手続きが終了するまで預貯金を全額引き出すことができません。(一部の引き出しは可能)

    そのため、遺産相続を放置することで預貯金を払い戻せず中途半端な状態となり、資産を活用できないという不利益があります。
     

    リスク②不動産に手を付けられない

    相続手続きが終了するまでは、亡くなった方が所有していた不動産に手を付けられません。

    亡くなった方が不動産を所有していた場合、相続手続きが終了するまでは法定相続人全員でその不動産を共有している状態となります。そのため、他人への貸し出しや改装・建て替えなど、法定相続人全員から同意を得る必要があり、1人でも法定相続人が欠けることで不動産に手を付けられなくなるというわけです。

    1人でも法定相続人と連絡が取れない場合、不動産の活用や処分が困難になるに加え、放置された不動産に固定資産税がかかり、余計なコストが生じることとなります。
     

    リスク③相続税申告による不利益が生じる

    通常は、相続する財産が一定以上の場合、被相続人が亡くなった日から10ヶ月以内に「相続税の申告と納税」が必要です。法定相続人に行方不明者がいることで遺産分割協議が終了していない場合、相続税の配偶者控除であったり小規模宅地であったりといった特例が適用されません。

    ただし、相続税の申告期限から3年以内に遺産分割協議が終了する見込みがあれば、その旨を報告することで前述した特例は適用されます。
     

    リスク④相続財産を無断で譲渡されたり利用されたりする

    相続を放置することで、法定相続人や第三者が遺産を不適切に利用したり、不当に譲渡したりする可能性があります。

    たとえば不動産であれば、自分以外の法定相続人が自身の相続分にあたる部分のみを勝手に売却するケースも。

    また、放置された不動産に他人が不法侵入したり、犯罪に使用されたりすることもあるため、管理には注意が必要です。

    まとめ

    適切な相続手続きは法定相続人全員の合意に基づくもので、連絡の取れない相続人がいると相続は正式には成立しません。相続が成立しない状況を放置すると、財産の管理や税務上の問題など、さまざまなリスクが生じます。

    これらのリスクは法律や税法に基づくもので、無視することはできません。そのため、連絡の取れない相続人がいる場合でも、適切な手続きや対応を進めることが重要です。

    司法書士法人・行政書士鴨川事務所では、相続に関するお問い合わせを随時受け付けております。相続で不安に感じていることや悩みなど、1人で抱えこまずにぜひ私たちへご相談ください。

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