お腹の赤ちゃん(胎児)と相続権について~京都で相続手続きの相談なら京都鴨川司法書士・行政書士事務所へ~
2021/08/25
今回は、お腹に赤ちゃんがいる場合の相続権について解説していきたいと思います。
具体的に想定されるケースとしては、父母の間の子が母のお腹にいるケースです。この場合、父が急な病死等により相続が発生した場合について考えていきたいと思います。
民法上、自然人の権利能力の始期は出生に始まるとされています。要は、一般的には、赤ちゃんは生まれてからいろんな権利や義務の帰属の主体となることができるということです。ですので、お腹の赤ちゃんについてはいまだ出生していませんので、権利の取り扱いをどうするかが問題となります。
ここで、民法においては、以下の3つについては、出生前の胎児はすでに生まれた後と同じように権利能力があるものとして扱われます
①相続
②遺贈
③損害賠償
です。今回は特にこの①の相続についてお話します。
つまるところ、お腹の中の赤ちゃんにも相続権は認められるということです。先の事例でお話すれば、父が亡くなった後の相続人は、母とそのお腹の中の胎児が相続権を有するということです。相続については、赤ちゃんがお腹の中にいても、生まれた後とおなじような取り扱いをしようということです。ただし、出産が死産であった場合には、相続開始にさかのぼって相続権がなかったという取り扱いになります(解除条件説 登記実務)
また、注意すべき点として、赤ちゃんがまだお腹の中にいる場合には、不確定な要素も多分に含むため、お腹の中の赤ちゃんを含めた遺産分割協議を行うことはできないとされています。
以下、胎児に対する相続登記について少し解説をします。司法書士以外の方には少しマニアックすぎる知識です。司法書士の方は復習です。
登記実務上、胎児を相続人とする相続登記をすることができる場合は、
①法定相続分による登記の場合
②遺言による相続分の指定がされている場合
に限られます。
この場合、未成年者の法定代理の規定が母と胎児の間にも類推適用されるため、母が子を代理して①②の登記申請を行うことができます。権利者としての書き方は「亡A妻B胎児」という書きぶりになります。この場合、胎児の住所は母の住所を記載します。また登記原因証明情報として胎児の懐胎証明は不要です。
そして、胎児が出生した場合には、年月日出生を登記原因とする名変登記を行います。
また胎児が死産してしまった場合には、Ⓐ胎児以外にも相続人がいる場合には、錯誤を原因とする所有権更生登記を、Ⓑ胎児のみが相続人であった場合には、死産を登記原因とする抹消登記を行うということです。書いていながら、とても珍しい登記となるかと思います。
最後は少しマニアックになってしまいました。
今回の記事をまとめると胎児にも相続権はある。しかしながら、まだ出生する前においては遺産分割協議を行うことはできないという点を抑えていただければと思います。
なお、出生した後の未成年者を含む遺産分割協議については、ブログのリンクを張っておきます
(前編 https://kyotokamogawa-souzoku.com/blog/detail/20210810194317/)
(後編 https://kyotokamogawa-souzoku.com/blog/detail/20210810202454/)
今回も最後まで読んでいただきありがとうございます
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