【徹底解説】土地が亡くなった人の名義のままにするリスクとは?
2024/10/31
被相続人から土地を引き継いだら、正しく登記を済ませる必要があります。当該手続きが完了していないと、法律上でもさまざまなトラブルを引き起こしかねないので注意が必要です。
この記事では不動産の相続人に向けて、次のポイントを解説します。
- 土地を亡くなった人の名義のままにするリスク
- 相続登記が義務となった背景や罰則の内容
- 手続きする前に確認したいポイント
- 具体的にどのようなプロセスを踏めばよいか
- 司法書士に依頼することで得られるメリット
土地の名義変更手続きに自信のない人は、ぜひ記事を参考にしてください。
目次
1.土地を亡くなった人の名義のままにするリスク
土地を亡くなった人の名義のままにすると、以降の生活にもさまざまなリスクが生じてしまいます。また、第三者とのトラブルを避けるためにも、正確な手続きをすることが大切です。
名義変更をしないとどういったトラブルが生じてしまうのか、解説していきます。
1-1.所有権を外部に表示できなくなる
名義変更をしないことで生じるリスクの一つが、所有権を外部に表示できなくなることです。
不動産は、登記をしなければ、自身が所有者であることを立証できません。もし第三者が先に登記を済ませてしまったら、所有権を争えなくなります。
不動産登記には、一般的に権利推定力が働きます。権利推定力とは、登記内容が事実と違うといった証明がなされない限り、名義人が所有者と推定される効力です。
不動産登記が、自身の所有権を守るうえで欠かせない手続きであることを押さえてください。
1-2.売却が難しくなる
同じくデメリットとして、第三者への売却が認められなくなる点も挙げられます。
基本的に不動産の売買は、名義人が行わないと効力を発揮しません。所有者が明確にならず、取引の信用性がなくなるためです。
例外的に遺産分割協議が完了していれば、引き渡しだけは認められることもあります。しかしこの場合にも、買主側が移転登記するタイミングでは相続登記を済ませないといけません。
もし自身の怠慢で売却ができなかったら、買主側に賠償金を請求されるリスクも生じます。
1-3.担保の設定ができなくなる
名義変更を済ませていないデメリットとして、担保の設定ができなくなる点も挙げられます。
たとえば、相続した土地に抵当権を設定しようとしても、土地の名義が亡くなった人のままでは、金融機関は基本的にお金を貸しません。土地を担保に融資を受けたいと考えている人は、特に注意してください。
金融機関の窓口に相談すれば、どのような手続きが必要かを詳しく教えてくれます。
2.土地の名義変更が必要になった理由
2024年3月までは、相続した土地の名義を変更しなくても法律上では特に罰則がありませんでした。しかし法改正に伴い、このような手続きを全員がするように定められたのです。
2-1.2024年4月より相続登記が義務化
民法および不動産登記法の改正(2024年4月施行)により、相続登記は義務となりました。
義務化された理由は、所有者不明の状態で放置された土地や建物が増えたためです。国や自治体も処分に悩まされており、都市開発の観点からも問題視されていました。相続登記を義務にすることで、不動産の放置を避けようと考えたわけです。
なお登記は、相続を知った日から3年以内に済ませないといけません。法律にしっかりと則って、確実に手続きを済ませてください。
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2-2.罰則が適用される恐れも
法律を侵し、相続登記をしないで放置すると「過料10万円以下」の罰則が適用される場合もあります。過料とは、行政手続きの義務を怠ったときに金銭が徴収される制度のことです。
罰金刑に似ていますが、過料はあくまで行政でのペナルティとして課されます。仮に金銭を徴収されても、刑事手続きではないので前科は付きません。
しかし過料に処されると、財産的にも少なからず負担がかかります。また不動産管理の秩序を守るためにも、責任を持って対応するように心がけましょう。
関連記事:相続登記の義務化による罰則・過料とは?罰則を受けないための方法も解説
2-3.過去に不動産を相続した人も手続きが必要
過去の相続分についても、相続登記をする必要がある点に注意しましょう。以前に親族から建物を受け継いでいる人も、情報をしっかりと確認したほうが賢明です。
仮に名義人が別の名前になっている場合は、猶予期間(〜2027年3月)が過ぎるまでに変更手続きを完了しなければなりません。
3.土地の名義変更において確認すべきポイント
土地の名義変更において、特に確認したいポイントは以下のとおりです。
- 誰が相続人なのか
- 遺言書の有無
それぞれ解説していきます。
3-1.誰が相続人なのか
手続きをする前に、他の相続人を把握しなければなりません。不動産の中には相続登記が全くおこなわれておらず、ふたを開けてみたら相続人が数多くいるケースもあるためです。
誰が相続人かを調べたいときは、まずは被相続人の戸籍謄本から情報を掴みましょう。また相続人の住所を把握すべく、全員分の戸籍謄本および戸籍附票を請求してください。
これらの書類を発行したら、相続人らに連絡が必要です。住所を調べ、手紙を郵送するなどして連絡を取りましょう。
3-2.遺言書の有無
名義変更を済ませる前に、遺言書の有無も確認しなければなりません。相続分の規定よりも、被相続人の遺言が優先されるためです。
遺言書には、大きく分けて3つの種類があります。
種類 | 内容 |
---|---|
自筆証書遺言 | 被相続人が自筆で作成 |
公正証書遺言 | 公証人および証人2人の立会いのもと作成 |
秘密証書遺言 | 遺言の内容を秘密にする方法 |
ただし自筆証書遺言や秘密証書遺言は、開封するには家庭裁判所の検認が必要です。相続人が勝手に開封するのは法律違反であるため、取り扱いには十分注意してください。
4.名義変更の具体的な手続き方法
名義変更が認められるには、最低でも次のようなプロセスを踏まないといけません。
- 不動産の情報の確認
- 遺産分割協議
- 必要書類を揃える
- 法務局に提出
どういった流れになるかを把握し、前もって準備を進めるようにしましょう。
4-1.不動産の情報を確認する
まず申請する前に、引き継いだ不動産の情報を細かく確認しなければなりません。相続した時点での権利関係がどのようになっているかをチェックしてください。
権利関係や不動産の面積といった情報は、基本的には登記事項証明書に示されています。登記事項証明書が自宅に保管されていない場合は、法務局に申請したうえで入手しましょう。
また不動産によっては、被相続人と他の親族が共有名義となっているケースも考えられます。親族と話し合い、どのくらい移転するかを具体的に記載しましょう。
4-2.遺産分割協議をする
不動産の情報を確認したら、他の相続人とともに遺産分割協議を開催します。遺産分割協議は、相続人全員が出席しないと開催できません。全員に連絡を取り、スムーズに実行できるよう手配してください。
民法にも相続分の規定はありますが、協議で自由に変えることも可能です。相続人全員から署名や捺印をもらい、遺産分割協議書を完成させましょう。
4-3.必要書類を集める
次に相続登記の申請をすべく、必要書類を収集します。法務局に提出しなければならない書類は次のとおりです。
- 登記申請書(ホームページからダウンロードも可)
- 登記事項証明書(登記簿謄本)
- 遺産分割協議書(または遺言書)
- 被相続人の戸籍謄本(出生〜死亡)
- 被相続人の住民票除票
- 相続人全員の戸籍謄本・住民票
- 相続人の印鑑証明書
- 固定資産評価証明書
ただし戸籍謄本を全て集めるとなると、申請者にも少なからず負担がかかるでしょう。労力を減らすには、戸籍謄本を1部にまとめて提出できる「法定相続情報証明制度」の利用がおすすめです。
4-4.法務局に提出
書類が全て揃ったら、管轄の法務局に提出しましょう。申請は無料でできるわけではなく、登録免許税を納めないといけません。ただし以下の条件に当てはめれば、2025年3月31日まで免税が可能です。
- 相続登記前に相続人が死亡した
- 引き継いだ土地の価格が100万円以下
法務局では、登録免許税用の収入印紙も販売されています。収入印紙を購入し、書類に貼り付けたうえで提出してください。
申請の内容に不備がなければ、法務局から登記完了証が交付されます。審査には1〜2週間程度かかるので、気長に待つようにしてください。
仮に書類に不備が見られたら、担当者から連絡が入ることもあります。そのときは担当者の指示に従い、なるべく早く対応しましょう。
5.相続登記は司法書士へ依頼するのもおすすめ
名義変更の手続きは複雑であり、これらを素人一人で進めるのは時間がかかります。自信がないのであれば、司法書士に依頼したほうが賢明です。
司法書士は、登記申請書の作成や必要書類の収集を代わりに対応してくれます。自分一人で進めるよりもミスする確率が格段に下がるため、忙しくて時間が取れない人には特におすすめです。
司法書士に相談しながら、どこまでの手続きに対応してもらえるかを詳細に確認してください。
また事務所によって、サービス内容や料金設定は細かく異なります。複数から見積もりを取れるように、地図アプリから近所にどのくらいの事務所があるか調べておきましょう。
6.まとめ
被相続人から土地を引き継いだら、必ず相続登記を済ませるようにしてください。今後の生活にも不便が生じるだけではなく、罰則の対象になってしまうおそれもあります。
ただし手続きを完了させるには、相続人や権利関係の調査といった細かい情報も調べないといけません。調査も含めると多大な時間を要するので、できる限り余裕を持って準備に取り掛かってください。
とはいえ名義変更は、素人だけで完了させると不備も生じやすくなります。不備なく申請を終わらせるためにも、最寄りの司法書士へ相談することをおすすめします。
司法書士法人・行政書士鴨川事務所では、土地の名義変更をはじめとした登記に関するお問い合わせを随時受け付けております。相続で不安に感じていることや悩みなど、1人で抱えこまずにぜひ私たちへご相談ください。