相続放棄したら借金は誰が払う?返済義務を負う人の移り方を解説
2024/03/08
相続放棄は、プラスもマイナスも含めすべての財産の相続権を放棄するものです。そのため、相続放棄をすれば借金の返済義務は原則なくなります。しかし、借金そのものがなくなるわけではありません。では、その借金は一体誰が払うのでしょうか。
この記事では、相続放棄をした際、誰が借金返済義務を負うのかについて解説します。相続放棄の注意点もご紹介するので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
1.法定相続人の優先順位
まずは法定相続人の優先順位について理解しておきましょう。
法定相続人とは、民法で定められた相続権のある人のことです。
法定相続人には順位があり、もし最優先の法定相続人が不在であるか、全員が相続放棄をした場合、権利は次の順位の法定相続人へと移行します。
(※ただし、故人が遺言を残していた場合は遺言の指示が優先)
第1順位 | 子ども、孫 |
第2順位 | 親、祖父母 |
第3順位 | 兄弟姉妹、甥姪 |
なお、配偶者は常に相続人となります。
2.相続放棄したら借金は誰が払う?
相続放棄をしたら、借金の返済義務は以下のように移ります。
2-1.①残りの同順位の相続人が負担
相続人のうち誰かが相続放棄をした場合、同順位の残りの相続人で負担することになります。
例のように、相続人が妻・長男・次男の3人で、長男が相続放棄を選択したとすると、3人の時は次男の相続借金額は1/4だったところが、長男が抜けることで1/2に増額します。
つまり、誰かが相続放棄をすると他の相続人の借金負担額が上がることになるのです。
(例)相続借金が1,000万円だった場合
通常 | 相続放棄をした場合 | |
妻 | 500万円(½) | 500万円(½) |
長男 | 250万円(¼) |
なし |
次男 | 250万円(¼) | 500万円(½) |
2-2.②次の順位の相続人に返済義務が移る
もし被相続人に子どもがいない、または子どもや孫が全員相続放棄をした場合、次は第2順位である親に返済義務が移ります。親や祖父母も相続放棄したら、さらにその下の兄弟姉妹に引き継がれます。
2-3.③連帯保証人が返済義務を負う
法定相続人全員が相続放棄をすると、借金の連帯保証人が返済しなければいけません。相続人の誰かが連帯保証人になっていた場合、相続放棄をしたとしても連帯保証人としての立場は消えないため、返済義務は残ります。
2-4.④相続財産管理人により清算される
全員が相続放棄し、連帯保証人もいなかった場合は「相続財産管理人」が選出されます。相続財産管理人とは、家庭裁判所が選任し相続人の代わりに財産管理を行う人のことです。選任された相続財産管理人は遺産の管理・処分・清算を行います。
3.相続放棄の注意点
相続放棄という手段をとる場合は、以下の点に注意してください。
3-1.プラスの財産も相続できない
相続放棄によって負債を負うことはありませんが、同時にプラスの財産も相続できなくなります。被相続人名義の家に同居していた場合、家から退去しなければなりません。相続した資産で負債分を補える可能性も十分にあるため、相続放棄すべきかどうかは慎重に判断しましょう。
3-2.相続放棄できなくなる可能性もある
相続放棄しようと決断しても、期限や条件を見逃していると相続放棄が認められない可能性もありますので、注意しましょう。
3-2-1.財産に手を付ける
被相続人の預貯金から支払いをしたり、車や家具を売却したりすると、その時点で「単純承認」したとみなされ相続放棄ができなくなります。
3-2-2.3ヶ月の申告期限を過ぎた
相続放棄をする場合、相続発生を知った日から3ヶ月以内に手続きをする必要があります。
3-3.他の相続人に連絡をしておく
相続放棄を行うと、負債の支払い責任は順に次位の相続人に移行しますが、債権者や裁判所から次の相続人へ通知が行くことはありません。そのため、あなたがその旨を伝えない限り、次の相続人は知らないうちに債務者になってしまいます。突然の借金の負担は、誰にとっても不快なものです。相続放棄を選択した際は、他の相続人へもその事実を伝えておきましょう。
4.まとめ
相続財産に多額の借金がある場合、相続放棄は有効な手段です。しかし、借金自体はなくならず、返済義務は他の相続人へと移っていきます。相続放棄する際は、周りへの影響も念頭に入れておきましょう。
相続放棄すべきかどうか迷っている方は、専門家への相談がおすすめです。司法書士法人・行政書士鴨川事務所では、相続に関するお問い合わせを随時受け付けております。相続で不安に感じていることや悩みなど、1人で抱えこまずにぜひ私たちへご相談ください。