相続登記をしないメリットはある?放置するリスクについて解説
2024/05/31
相続が発生した際、不動産の相続登記を行うことは重要なステップの一つです。しかし、相続登記には費用や手間がかかるため、先延ばしにしたいと考える方も多いでしょう。相続登記をしないことにはメリットがあるのでしょうか?
この記事では、相続登記をしないメリットと、それ以上に大きなデメリットやリスクについて詳しく解説します。また、相続登記の手続き方法についても説明しますので、不動産の相続に直面した方は是非参考にしてください。
目次
1.相続登記をしないメリットはある?
相続登記をしないことのメリットは以下です。
1-1.登記手続きの費用がかからない
相続登記を行わないことのメリットは、登録免許税や司法書士への報酬などの費用を節約できることです。相続登記を行う際には、登録免許税の支払いが必要となります。この税金は、【固定資産税評価額×0.4%】で算出されます。
また、相続登記は相続人自身で手続きを行うことも可能ですが、ミスを防ぎスムーズに進めるためには、司法書士などの専門家に依頼するのが賢明です。司法書士への報酬は相続内容によって異なりますが、おおむね6万円から10万円程度が相場です。さらに、相続登記に必要な謄本などの書類を集める際にも、数千円から数万円の費用がかかります。
もし相続財産が不動産のみで、他に流動性の高い資産が残されていない場合、相続人は自身の財産からこれらの費用を工面しなければなりません。そのため、費用の捻出が難しい方にとっては、相続登記を先延ばしにしたいと考えるでしょう。
2.相続登記をしないのはリスクのほうが大きい
相続登記をしないメリットとして「登記手続きの費用がかからないこと」を挙げましたが、逆に言えばこれ以外はメリットが存在しません。それ以上にデメリット・リスクのほうがあることになります。
では、具体的にどのようなリスクがあるのでしょうか。ここでは相続登記をしないことのリスクについて詳しく解説します。
2-1.2024年4月からは罰則対象
令和6(2024)年4月1日以降、相続発生から3年以内に相続登記を行わない場合、罰則として過料が課される可能性があります。
これまでは相続登記の申請は義務ではありませんでしたが、法改正により令和6(2024)年4月1日以降は申請が義務化されました。そして、正当な理由なく相続登記の申請義務を怠った場合、10万円以下の過料に処されるという罰則規定も設けられています。
義務化以前に相続が発生した場合であっても、新制度開始後3年以内に相続登記を完了させる必要があるので注意してください。
関連記事:相続登記の義務化による罰則・過料とは?罰則を受けないための方法も解説
2-2.権利関係が複雑化する
相続登記を放置すると、時間の経過とともに相続人が増加し、手続きが複雑になる恐れがあります。被相続人の相続人が亡くなれば、その配偶者や子どもなどが新たな相続人となるため、相続人の数が増えるほど、必要な書類の収集や遺産分割の話し合いがスムーズに進まなくなるリスクが高まります。
加えて、登記の回数が増えるほど、手続きにかかる費用も高くなる点にも注意が必要です。特に、不動産の名義人の代が古い場合、現代とは戸籍の見方が異なるため、必要書類の収集が非常に困難となり、専門家である司法書士に依頼せざるを得なくなるでしょう。そのため、相続登記を先延ばしにすればするほど、手間や金銭的な負担が大きくなることを認識しておくべきです。
2-3.不動産を売却できない
不動産の売却には、相続人への名義変更が必要です。相続登記を行わずに不動産の名義変更を怠ると、その不動産を売却することができません。
通常、不動産の売却と相続登記の準備は並行して進めていくことになりますが、被相続人の死亡からかなりの時間が経過している場合、相続登記に予想以上の時間を要してしまうリスクを考慮に入れておく必要があります。時間の経過とともに土地の資産評価額が下落してしまう可能性があるので、注意しましょう。
2-4.担保にできない
金融機関から借入を行う際、不動産を担保として提供すると、金利の優遇や有利な条件での融資を受けられるなどのメリットがあります。しかし、相続登記が完了していない不動産は、融資の担保として認められません。将来的に融資を利用する可能性がある場合は、相続登記を済ませておくことが賢明です。
2-5.第三者へ権利の主張ができない
相続登記を行わない場合、たとえ遺産分割協議において不動産の所有権を取得する予定であっても、第三者に対してその所有権を主張することができません。
その結果、他の相続人が自身の持分(法定相続分に基づく割合)を勝手に売却したり、相続人の債務によって債権者から差し押さえを受けたりするリスクがあります。
つまり、相続登記を怠ると、意図せずに他人と不動産を共有する事態に陥ってしまう可能性があるのです。
3.相続登記の手続き方法
相続登記の方法としては、①司法書士に依頼する、②自分で手続きをするの2つがあります。
司法書士に依頼する場合、報酬は発生しますが複雑な手続きの手間はかかりません。一方で、自分で手続きを進める場合、報酬の負担はありませんが手間と時間がかかることになります。ここでは、自分で申請する場合の手順について解説します。
3-1.①相続する不動産の状況確認
相続登記の手続きを始める際、まず対象となる不動産の登記簿の状況を確認することが重要です。遺産分割協議や登記申請書の作成には、物件の詳細な情報が不可欠だからです。物件情報を詳しく知るためには、「登記事項証明書」を取得する必要があります。登記事項証明書には、不動産の地番や所有者、担保に関する情報が記載されています。登記事項証明書は法務局で取得できます。
毎年届く固定資産税納税通知書や権利証、登記簿謄本には地番や家屋番号が記載されています。もし手元にない場合は、法務局で地番や家屋番号を検索することができます。
3-2.②戸籍・戸籍附票の収集
不動産の名義人が判明したら、遺産の相続関係を正確に把握します。
遺言書がない場合、相続登記は法定相続人全員で手続きを行わなければならないからです。
相続関係を正確に把握するためには、戸籍謄本等の書類が必要不可欠です。
戸籍謄本等には、戸籍謄本、改製原戸籍、除籍謄本、附表など、いくつかの種類があります。
これらすべての書類が必ず必要というわけではありません。亡くなった方の死亡から出生までを遡って必要な情報が記載されている謄本を準備することが重要です。例えば、戸籍謄本だけでは情報が不足する場合、他の謄本も揃える必要があるでしょう。
戸籍謄本等は、被相続人の本籍地の市区町村役場で発行されます。ただし、結婚などのタイミングで本籍地が変更されている場合があるので注意が必要です。そのような場合は、以前の本籍地を調べて役所に謄本の発行を申請しなければなりません。遠方の役所から取得する必要がある場合は、取り寄せることも可能です。
3-3.③遺産分割会議
遺言書がない場合は、遺産分割会議を行います。法律では、各相続人の相続分について一応の基準が定められています(法定相続分)。ただし、これはあくまでも目安に過ぎず、遺産分割協議を通じて、相続人間の合意により割合を自由に変更することが可能です。遺産分割協議書には、相続人全員の署名と実印による捺印が必要です。また、相続登記を行う際には、協議書とともに全員分の印鑑証明書を添付しなければなりません。
3-4.④申請書の作成
相続登記に必要な登記申請書は、法務局の窓口で入手するか、法務局のホームページからダウンロードすることができます。ただし、遺言書の種類や遺産分割協議の有無によって、使用する様式が異なります。申請書を選ぶ際は、自分のケースに合った正しい様式を使用するよう注意が必要です。
3-5.⑤法務局へ申請
登記申請に必要な書類と申請書が揃ったら、管轄の法務局に登記申請を行います。
申請方法には、法務局の窓口に直接提出する方法と郵送による方法の2種類がありますが、手間を考えると郵送がおすすめです。ただし、申請書類の重要性を考慮して、必ず書留や赤色レターパックを利用して送付するようにしましょう。
4.まとめ
相続登記を行わないことで、一時的には費用を抑えられるかもしれません。しかし、法改正により相続登記が義務化された以上、いずれは手続きを進めなければなりません。また、先に説明したように、相続登記を放置することで、さまざまなデメリットが生じる可能性があります。
したがって、不動産の相続が発生した場合は、できるだけ早い段階で司法書士に相談し、適切な対応を取ることをおすすめします。専門家のアドバイスを受けることで、スムーズに相続登記を完了させ、トラブルを未然に防ぐことができるはずです。