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失踪宣告は自分でできるの?手続きの流れや必要書類を解説

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失踪宣告は自分でできるの?手続きの流れや必要書類を解説

失踪宣告は自分でできるの?手続きの流れや必要書類を解説

2024/12/26

生活する中で親族が突然行方不明になり、生死がわからない状態になるケースが稀に起こります。また、失踪宣告を家庭裁判所に申し立てるうえで、費用などの関係により自分だけで手続きしたいと考える人もいるでしょう。

そこでこの記事では、自分で失踪宣告する方法について詳しく説明します。手続きの流れに加え、必要書類や注意点もまとめています。

併せて司法書士に依頼するメリットも取り上げるので、失踪宣告を検討している人はぜひ参考にしてください。

目次

    1.失踪宣告とは

    失踪宣告とは、行方不明になった者を期間満了後に死亡したとみなす制度です。失踪宣告を大きく分けると、普通失踪と特別失踪の2種類があります。具体的な手続きについて触れる前に、まずは双方の違いを押さえましょう。
     

    1-1.普通失踪=7年間生死不明で効力発生

    普通失踪とは、失踪者が7年間生死不明のときに死亡したとみなす制度です。何事もない日常生活で、突如行方不明になったケースが該当します。

    普通失踪の効力が発生するのは、7年を経過したあとです。家庭裁判所に対する失踪宣告の申し立ても、失踪から7年後にする必要があります。一方で失踪に気付かず、10年後に申し立てた場合でも、死亡したとみなされるのは7年を経過したタイミングです。
     

    1-2.特別失踪=危難が去った後に効力発生

    特別失踪とは、天災などの危難に巻き込まれて生死不明となった者を死亡したとみなす制度です。たとえば、漁に出た家族が嵐に巻き込まれて行方不明となったケースが該当します。

    特別失踪の申し立てができるタイミングは、危難が去ってから1年後です。しかし死亡したとみなされるのは、危難が去ったときとされています。普通失踪とは違い、申し立てする日と効力発生日が異なるので注意してください。

    2.失踪宣告を自分でする際の流れ

    失踪宣告をするには、以下のプロセスを踏まないといけません。
     

    1. 家庭裁判所に申し立て
    2. 家庭裁判所による調査
    3. 公告の手続き
    4. 家庭裁判所からの審判
    5. 戸籍謄本などの手続き


    各プロセスにおいて、どのような手続きが必要になるかを解説しましょう。
     

    2-1.①家庭裁判所に申し立てる

    失踪宣告の申し立ては、失踪者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所にします。申し立てる権利を有するのは、以下の条件に該当する利害関係人です。
     

    • 配偶者
    • 父母
    • 相続人
    • 保険金の受取人(失踪者を被保険者とする)
    • 受遺者(失踪者から遺贈を受ける)


    このように申立人は、失踪者と法律上の利害関係を持たないといけません。単に知り合いであるだけでは、失踪宣告は効力を発揮しないことを押さえてください。問題なく書類が受理されると、家庭裁判所の調査が始まります。
     

    2-2.②家庭裁判所によって調査がおこなわれる

    失踪宣告を申し立てたあとは、家庭裁判所によって調査がおこなわれます。家族に対して、失踪者が本当に生死不明の状態であるかを確認するのが一般的です。

    また運転免許証や出入国に更新履歴があった場合、生死不明の状態とはみなされません。家庭裁判所は、このような登録機関の履歴も調査します。
     

    2-3.③家庭裁判所が公示催告の手続きをする

    家庭裁判所が調査したあとにおこなわれるのは、公示催告の手続きです。具体的には、以下の事項が官報に掲載されます。
     

    • 失踪宣告の申し立てがなされたこと
    • 失踪者が生存していたら本人がその事実を一定期間内に届けること
    • 失踪者の生存を知る人も同様
    • 生存の届出がない場合には失踪宣告が生じる旨
    • 失踪者の氏名、住所、生年月日
    • 申立人の氏名、住所


    官報に掲載される期間は普通失踪であれば3カ月以上、特別失踪は1カ月以上です。
     

    2-4.④家庭裁判所から審判が下りる

    公示催告を経ても生存の届出がなかった場合、家庭裁判所が失踪宣告の審判を下します。審判が確定するのは、決定から2週間経過したあとです。確定後、家庭裁判所から「審判書の謄本」「確定証明書」が送付されます。
     

    2-5.⑤戸籍謄本などの手続きをする

    失踪宣告の審判が下りても、戸籍謄本の内容が自動的に改正されるわけではありません。失踪宣告後、10日以内に市町村役場で手続きする必要があります。

    手続きする際には、失踪届・審判書の謄本・確定証明書の提出が必要です。ただし自治体によって提出書類が異なることもあるかもしれません。市町村役場へ訪問する前に、公式サイトをあらかじめ確認しましょう。

    手続き終了後は、自治体が法務局に申請内容を確認してから除籍がおこなわれます。除籍が完了するまでは、2週間程度かかります。

    3.失踪宣告するときに必要な書類

    ここで家庭裁判所へ失踪宣告するときに、揃えないといけない書類を紹介します。特に利害関係人となる人は、その事実を証明する書類も必要です。入手方法も加えて具体的に解説していきます。
     

    3-1.申立人および失踪者の戸籍謄本

    必要書類の一つとして挙げられるのが、申立人および失踪者の戸籍謄本です。これらの書類は、住所を管轄する市町村役場から入手できます。

    また自治体によっては、郵送やマイナンバーカードを使った電子申請に対応しているところもあります。家庭裁判所は、申立人と失踪者の家族関係を把握しなければなりません。そのため、「抄本」ではなく「謄本」を取ってください。
     

    3-2.失踪者との利害関係を証明する書類

    失踪宣告を申し立てるには、失踪者と利害関係を有していなければなりません。したがって利害関係を証明する書類も提出してください。

    自分が失踪者の配偶者や相続人にあたる場合、戸籍謄本を提出すれば問題ありません。しかし保険金の受取人であるときは、この事実を証明する書類が求められることもあります。
     

    3-3.行方不明であることを証明する書類

    失踪宣告の申し立てには、行方不明であることを証明する書類も必要です。主な書類として以下のものが挙げられます。
     

    • 捜索願が掲載された新聞の切り取り
    • 失踪者の残した手紙やLINE等のメッセージ
    • 家族や知人の陳述書
    • 不在者管理人選任決定書


    手元に証明できる書類があるのであれば、ひと通り提出してみるとよいでしょう。
     

    3-4.収入印紙および郵便切手

    失踪宣告を申し立てるには、費用も支払わないといけません。800円分の収入印紙が必要になるため、提出前にあらかじめ購入しましょう。収入印紙は郵便局や法務局、コンビニなどで購入が可能です。

    収入印紙以外にも、郵便切手を用意する必要があります。家庭裁判所によって金額が異なることもあるので、「各地の裁判所一覧」から調べてください。
     

    3-5.その他申し立てにかかる費用

    申立費用や郵便切手のほかにも、失踪宣告では下記の費用がかかることもあります。
     

    • 公示催告費用
    • 郵送費
    • 交通費
    • 戸籍謄本などの取得費


    また自分で手続きするのがどうしても難しくなり、司法書士に依頼する場合は司法書士手数料の負担も必要です。家庭裁判所へ申し立てる前に、どのくらいの費用がかかるかを計算しましょう。

    4.失踪宣告を自分でするときの注意点

    失踪宣告を自分でするときには、いくつか注意すべきポイントがあります。申立後に生じうる、相続や保険金の権利関係にも対応しなければなりません。
     

    4-1.失踪者が生きていたら取り消しの手続きが必要になる

    失踪宣告を申し立てたあとに、失踪者が生きていたら取り消しの手続きを踏まないといけません。取り消しできる者は、失踪者本人または利害関係人です。

    仮に失踪者が生存していた場合、相続人らは分配した財産を返還する必要があります。しかし実際に生きていたことを知らなかった者(善意者)であれば、返還義務が生じる範囲は「現存利益」のみです。

    家を購入したときは、現金という財産が不動産に変わっているだけであるため返還しないといけません。一方でギャンブルに使ったケースでは、財産は手元にないので返さなくてもよいとされています。

    関連記事:失踪宣告した人が生きていた場合の手続きとは?相続や生活への影響を解説
     

    4-2.相続の権利関係や手続きが複雑になる

    失踪宣告をすると、相続の権利関係も複雑になるため注意が必要です。

    たとえば自身の父親が死亡し、財産を母親と兄弟で分配したとしましょう。しかし自身の兄が行方不明であり、ちょうど7年の期間が満了しました。もし兄が未婚であれば、直系尊属である母親がさらに財産を引き継ぎます。

    加えて実際に兄が生存していたら、現存利益分は返還しなければなりません。相続税の負担にも影響が出るため、相続の権利関係はじっくりと調べる必要があります。
     

    4-3.相続税の納付期限に間も押さえる必要がある

    失踪宣告の審判が確定すると、失踪者はその時点で死亡したとみなされます。したがって審判確定したのを知った日から10カ月以内に、相続税の納付手続きも済ませないといけません。

    被相続人ではなく相続人が失踪者である場合は、相続と失踪の手続きの両方をおこなう必要があります。ただし相続人の一人が行方不明であっても遺産分割協議ができず、かつ相続税の納付期限も延長されません。

    遺産分割をしないで相続税を納付すると、「配偶者の税額の軽減」などの特例が受けられなくなります。一方で「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出すれば、例外的に3年以内は特例を受けられるので併せて提出しましょう。
     

    4-4.死亡一時金や生命保険金の扱いが複雑になる

    失踪宣告においては、死亡一時金や生命保険金の扱いが複雑になる点も注意が必要です。死亡一時金では、平成26年より審判確定日の翌日から2年以内に請求すれば、消滅時効が援用されず給付されるようになりました。

    生命保険金についても、家庭裁判所が審判を確定させた日から受け取りの対象になります。失踪宣告により財産整理するまでは、失踪者が保険に加入しているかわからない人もいるでしょう。

    そこで財産整理のときは、保険証券や生命保険料控除に関する書類がないかを探してみてください。

    5.失踪宣告を司法書士に依頼するメリット

    ここまで説明したように、正しい手順さえ押さえていればプロに頼らなくとも失踪宣告は可能です。しかし司法書士に依頼したほうが、手続きにおいてさまざまなメリットを享受できます。

    特にメリットといえるのは、書類を代わりに作成してもらえることです。司法書士は弁護士と異なり、全ての行為に代理権を有するわけではありません。家庭裁判所への提出は、自らする必要があります。

    一方で提出書類に関しては、司法書士による代理作成が認められています。揃えないといけない添付書類についても教えてくれるため、自分で手続きするのが難しいと感じたら早めに相談するとよいでしょう。

    6.まとめ

    親族が行方不明になった場合、生存しているかも把握できないので、大半の人は困惑するはずです。相続の権利関係が複雑になることから、家庭裁判所に失踪宣告をしなければなりません。

    費用を抑えたいなどの理由により、あえて司法書士に依頼せず自分で手続きを進める人もいるでしょう。ただし手続きを進める中で、想定外のトラブルが生じる恐れもあります。余程の事情がなければ、なるべく司法書士に依頼することをおすすめします。

    司法書士法人・行政書士鴨川事務所では、失踪宣告や相続に関するお問い合わせを随時受け付けております。相続で不安に感じていることや悩みなど、1人で抱えこまずにぜひ私たちへご相談ください。

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