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失踪宣告された人が生きていたときの手続き|相続や生活への影響も解説

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失踪宣告された人が生きていたときの手続き|相続や生活への影響も解説

失踪宣告された人が生きていたときの手続き|相続や生活への影響も解説

2024/11/27

相続が発生したとき、行方がわからない親族や相続人がいるケースがあります。そのような状況で申し立てられることがあるのが、失踪宣告です。

失踪宣告を申し立てることで、行方不明となっている人は「法的に死亡」したとみなされ、相続を再開できるようになります。

ですが失踪宣告による死亡の認定後に、知らないところで生活していたケースが稀に起こります。このような事態が発生したとき、相続財産の取り扱いが複雑になるため注意が必要です。

そこでこの記事では、失踪宣告の内容や取り消す際に必要な手続きについて解説していきます。もし身近に連絡の取れない親族や相続人がいる場合は、この記事を読み内容を把握しておきましょう。

目次

    1.失踪宣告には2種類ある

    失踪宣告には、大きく分けて普通失踪と特別失踪の2種類があります。
     

    種類 概要
    普通失踪 7年間行方不明の場合申し立て可能
    特別失踪 危難が去ってから1年経過で申し立て可能


    それぞれの内容について解説していきます。
     

    1-1.普通失踪(7年間行方不明の場合申し立て可能)

    普通失踪とは、失踪人の生死が7年間不明な場合の失踪宣告です。たとえば、ある日突然置き手紙があり、そのまま行方をくらます事例が該当します。

    普通失踪によって失踪宣告を申し立てる場合は、家庭裁判所で手続きを踏む必要があります。死亡したとみなされるタイミングは、期間が満了したときです。相続も7年後に開始するのが原則とされています。
     

    1-2.特別失踪(危難が去ってから1年経過で申し立て可能)

    特別失踪とは、死につながるような危難が具体的に生じた際の失踪宣告です。たとえば、海に出た漁師が嵐による事故で行方不明になるケースが挙げられます。こちらも普通失踪と同様に、家庭裁判所への申し出が必要です。

    戦争や船舶事故などによって行方不明になってから1年間生死が明らかでないとき、申し立てが可能になります。

    2.失踪宣告された者が生きていたらどうなる?

    失踪宣告をされたものの、実際は失踪人が生きていることもあります。仮に生存が明らかになったら、親族らは失踪取り消しなどさまざまな手続きをしなければなりません。具体的にどのような手続きが必要になるかを解説します。
     

    2-1.生存が判明したら失踪宣告を取り消す必要がある

    失踪人が生きていたら、まずは失踪宣告の取り消しを家庭裁判所に申告しないといけません。取り消す権利を持つ人は次のとおりです。
     

    • 行方不明になっていた本人
    • 利害関係人(相続人や債権者など)


    利害関係人となる要件は、本人と法律上の利害が発生していることです。単に知り合いであるだけでは、失踪宣告の取り消しはできません。検察官も利害関係人には該当しないと考えられています。
     

    2-2.失踪取り消し前の行為は原則有効となる

    失踪宣告により不動産を相続した人が、第三者に売却したとしましょう。もし失踪宣告が取り消されて売買契約も無効になると、購入者の生活にも支障が出てしまいます。

    こうした事態を防ぐべく、原則として取り消し前の行為も有効です。ただし売主や買主が不在者が生きていることを知っていたとき、売買契約は無効とみなされます。あくまで善意があること(事実を知らないこと)が要件となっています。
     

    2-3.婚姻関係が復活する

    失踪人が死亡したとみなされると、婚姻関係は解消されるのが原則です。しかし失踪宣告が取り消されれば、変わらず婚姻していたと判断されます。

    なお失踪宣告の効力が発揮しても、失踪人の配偶者が別の人と再婚する分には問題ありません。生存していたことを把握していなければ、再婚にも影響ないと解釈されます。一方で生存の事実を知っていたら、「重婚」に当たるので再婚の効力が失われます。
     

    2-4.失踪宣告により受け取った財産は返還する

    失踪人の財産は、失踪宣告の効力が発生したタイミングで相続の対象となります。しかし実際に生きていた場合、複数人に財産を分配された失踪人本人は、今後の生活において多大な負担がかかるでしょう。

    そのため失踪宣告が取り消されたら、財産の中には返還義務が生じるものもあります。ここでは返還が必要な財産の例として、相続財産と生命保険について解説します。

     

    2-4-1.返還義務が生じる財産①相続財産

    相続財産に関しては、一般的に失踪人へ返還義務が生じます。たとえば父親が失踪し、配偶者と子で財産を分割した場合は、本人へ返さないといけません。

    ただし返還義務が生じるのは、あくまで「現に利益を受けている利益(現存利益)」です。預金を相続し、そのお金で家を購入したと仮定します。このケースではお金を消費しているものの、相続人は「不動産」として財産が残っているので現存利益に該当します。

    一方でギャンブルで浪費した場合は、手元に何の財産も残りません。したがって現存利益にはあたらず、本人に返還する必要がないわけです。

    とはいえ相続財産の取り扱いは、親族らで自由に決めるのが一般的です。民法にはルールが規定されていますが、親族間での話し合いに重点を置きましょう。

     

    2-4-2.返還義務が生じる財産②生命保険

    返還義務が生じる財産には、生命保険も挙げられます。失踪宣告が取り消されたら、受け取った分の保険金を保険会社へ返さなければなりません。

    こちらも相続財産と同様、返還する必要があるのは現存利益のみです。ただし自身では現存利益と思っていなくとも、世間的には返還義務が生じてしまう可能性もあります。個人の価値観で判断するのではなく、プロの司法書士に相談したほうが賢明です。

    3.失踪宣告を取り消す手順

    失踪宣告を取り消す際には、大きく分けて4つの手順を踏む必要があります。
     

    1. 家庭裁判所への申し立て
    2. 必要書類の準備
    3. 家庭裁判所の審理開始
    4. 審判および結果の送付


    手順ごとに、どういった手続きをしなければならないかを解説しましょう。
     

    3-1.①家庭裁判所への申し立てる

    失踪宣告を取り消すには、家庭裁判所への申し立てが必要です。失踪人の住所を管轄する家庭裁判所が、具体的な申立先となります。「失踪宣告取消審判申立書」を公式サイトからダウンロードできるため、記入例を参考にしながら必要事項を記入しましょう。

    なお先程も説明しましたが、申立人はあくまで失踪人と利害関係を有する者でなければなりません。自分に申し立てる権利があるかどうかを、事前に司法書士へ確認するとよいでしょう。
     

    3-2.②失踪宣告の取り消しに必要な書類を用意する

    「失踪宣告取消審判申立書」を提出するうえでは、次の必要書類も用意しなければなりません。
     

    必要書類 概要

    戸籍謄本および戸籍附票

    不在者の分1通ずつ

    不在の証拠となる資料 手紙や捜索願受理証明書など
    失踪人との利害関係を示す資料 親族の場合は戸籍謄本
    収入印紙 800円(不在者1人あたり)
    郵便切手(連絡用) 金額は管轄の家庭裁判所へ確認

     

    加えて官報公告料として、4,816円の納付も必要です。ほかにも家庭裁判所の審判において、必要書類が出てくる可能性もあります。何か提出が求められたら、迅速に対応できるようにしてください。
     

    3-3.③家庭裁判所で審理が開始される

    失踪宣告を取り消す申告がなされたら、家庭裁判所は失踪人が本人かどうかを確認します。確認方法としては、家庭裁判所の調査官が提出した書面を通して調査する方法が一般的です。

    場合によっては、生存者本人に対する聞き取り調査もあるかもしれません。家庭裁判所側がスムーズに審理手続きを進められるよう、申立人らも協力しましょう。
     

    3-4.④審判および結果が送付される

    申し立てが適切と認められれば、家庭裁判所は失踪宣告取り消しの審判をします。まず申立人に対して、審判書謄本が送付されます。謄本が届いたら、内容をよく確認してください。

    もし内容に不服があったら、2週間以内に不服申立てをする必要があります。不服申立てがなかったら、家庭裁判所の審判は正式に確定して官報にも掲載されます。

    しかし審判が確定しても、戸籍謄本の内容が自動的に変わるわけではありません。戸籍関連の手続きは、市町村役場で別に行わないといけないので注意が必要です。

    4.相続人に失踪宣告者がいたらどうする?

    ここで被相続人ではなく、相続人に失踪宣告者がいたときの流れを解説しましょう。遺産分割協議は、基本的に相続人全員の参加が義務付けられています。したがって相続人が行方不明の場合は、失踪宣告をして相続手続きを進めます。

    ただし普通失踪であれば、生死不明の状態から7年間経過しないと死亡したとはみなされません。7年間経過するまで待つのは、ほかの相続人にも多大な負担がかかるでしょう。そこで不在者財産管理人を選定し、失踪人の代わりに相続手続きをおこなうのが一般的な流れです。

    行方不明となっていた相続人が、実は生きていたケースも考えられます。この場合、全員が生存していたことに善意であれば、遺産分割は有効であるため再度やり直す必要はありません。しかし相続人のうち誰か一人でも生きている事実を知っていたら、遺産分割協議は無効です。

    5.失踪宣告に関するご相談は司法書士へ

    失踪宣告はルールが複雑であり、民法を詳細に理解する必要があります。さまざまな手続きに追われる中、これらのルールを習得するのは難しいでしょう。

    そのため失踪宣告の取り消しをするのであれば、民法のプロである司法書士に依頼するのをおすすめします。司法書士であれば失踪宣告に関する相談のみならず、書類作成の代理も可能です。

    複数の事務所に訪問しつつ、相性やサポートが良いと感じたところに依頼しましょう。

    6.まとめ

    親族が行方不明になったとき、財産関係を明確にするには失踪宣告も選択肢の一つとなります。ただし失踪宣告が認められるには、普通失踪と特別失踪の要件を満たさなければなりません。

    また家庭裁判所から審判が下りても、失踪人が実は生きているケースもあります。この場合は財産関係もさらに複雑になるため、司法書士と相談したうえで手続きしてください。

    司法書士法人・行政書士鴨川事務所では、失踪宣告や相続に関するお問い合わせを随時受け付けております。相続で不安に感じていることや悩みなど、1人で抱えこまずにぜひ私たちへご相談ください。

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